少年野球というブラック企業の疑似体験の話~大人編~
今週のお題「雪」
そこのお前は野球少年だった。
今では立派なヤクルトスワローズファンである。
20年変わらず真中が好きだ!
さて、今回は前回の続き、少年野球がブラック企業の疑似体験だった話。
これを大人目線を持った時にどう見えるかを書いてみました。
地元の少年野球チーム。
これ大人の観点から見るとめちゃくちゃ複雑な事情が絡み合っている場合もあるので、その組織模様を見るとそれはそれである意味勉強になるのですが、特徴は下記の通りです。
- 監督・コーチは基本的には所属選手の父親またはOB Orその父親。(一部の強豪やクラブチームを除く)
- 無給+土日祝は基本一日拘束(チーム方針によります。)
- 小学校1年から6年まで幅広く見る。(聞き分けのない子からおとなしいお坊ちゃんまで全部)
- 全スタッフ誰かの親(試合組んだり、練習のグランド手配から当日の世話まで)
- 基本、屋外グランドでメインシーズンは夏。
- 親同士での役割分担+序列関係等、チームの秩序維持
すると、平日はみっちり働いて、土日は付きっ切りで子供の野球を見るというになります。
これぐらいハードにやるから日本の野球文化・レベルは他のスポーツと比べて常に上位に居続けたのだとは思いますが、やっぱりこれぐらいキツいのは現代には合わず、少子化と相まって野球人口の減少が叫ばれていることは間違いありません。
それはさておき、少年野球を親目線で見てみると結構エグいことに気が付くと思います。
- 親同士の関係構築
- 貴重な休みをがっつり使い切る
- わが子がチーム間競争で場合に勝てるかは不明
- どんな子か知らない自分以外の子供もきっちりと面倒を見る
もしこれを結構高いレベルで実現しようとした時に、平日働いた上に休日もやるというのはもはや仕事レベルにハードなんじゃないかと思います。
(※中には仕事より断然ハードにやるお父さんもいます。。。)
これによいモチベーションを維持するには以下の要素が大きく左右します。
- 野球が好きで好きでたまらない。
- 野球で活躍するわが子に夢を乗せている。
- わが子関係なく、子供が好きで好きでたまらない。
- 親同士、子同士の関係が非常に良く、休日を使うにふさわしいコミュニティ
- チームがとても強く、子供の成長も踏まえ、所属することにポジティブな影響がある。
この5要素すべて揃っているようなチームは非常にまれですが、揃う要素が多ければ多いほどいいですよね。
そういうチームは強いですし、5番は1から4の積み上げで成立する部分もありますので、こういう環境の場合、たとえレギュラーでなくとも本当に勉強になる可能性が高いです。
ただ、人生は光もあれば闇もあるもので、こういうケースも存在します。
- 日頃のストレスのはけ口化している。
- 家にいると気まずいので、子供の面倒を見る口実で外に居る隠れ蓑。
- 指導に全力を尽くせども、子供が成長しない、またはチームが勝てない。
- 子供が所属するからついていくが、そもそもわが子以外には全く興味がない。
- 親同士の不仲または子供の卒業後も顔を出す古参の主の存在で淀んだ空気である。
少年野球の少年にとっての地獄はここから生み出されます。
特にこの3番が今日のミソです。
指導に全力を尽くすといっても、本業がある中で子供にきちんとした野球を指導するのは簡単ではありません。
ほとんどのチームは指導者としては素人集団です。
野球のベストな技術は日々進化していますし、指導法や指導技術だって時代の流れがありますが、すべての親がきちんと野球を学び、その指導技術を日々進化させているわけではないので、良質なコーチというのは非常に限られます。
でも、少年野球のコーチがコーチでいられるのは基本は子供の在籍期間内で一人につき最長6年です。
(兄弟の年が離れていて、上の子の小1から下の子の小6までと10年を超えてくるケースもありますが。。。。)
その限られた期間と時間の中できちんとしたレベルを要求されるというのもまた大変な話です。だって彼らはボランティアなんだから。
この辺、非常に難しい問題が横たわっているので、ぜひ野球界として取り組みがあるといいなと他力本願しているんですが、要はリスクが下記の一文に集約されるんです。
子供を育てるプロでない大人が昔の指導法と当時身に着けた技術のみで、子供に対してあたかも絶対的な権力者かのような顔ができる場所になりかねない
ということです。
(※決して全てのチームがそうではありません。本当に質の高いチーム・小学生の育成の場としてふさわしいチームはたくさんあります。が、その裏ではこういう負の現実も抱えているという意味です。)
少なくともそこのお前のチームはそんな感じでした。
小学生の時点で親を超えてうまくなり、黙らせるには天賦の才があるか、質のよい練習を相当量積まねばなりません。
こういった指導者が絶対的な存在であること自体は少年野球に限ったことではなく、プロが出るような強豪校でも同じような例はありますし、この軍隊のような組織構造が必ずしも悪であるとは言い切れませんが、一般に受け入れにくいのは事実です。
ただ、高校野球で甲子園やプロを目指すレベルになってくると血のにじむ努力が必要で、一気に追い込んで短い時間で子供を鍛えるというのは、子供にとってその目標が自分のものとして魅力的に存在している限りは一つの方法だとも考えられます。
ですが、そこのお前の場合、片田舎の小学生の集まる少年野球チームであり、さして強くもありません。
みんなプロ野球とか甲子園なんて夢のまた夢です。
目指したいっていう人すら超絶少数でした。
そんな環境で、相手は子供なので基本的には負けることはありません。
また外部から余計な口出しをされることも少ないです。
なので、大会に勝つためとか野球がうまくなるためみたいな純粋で前向きでアツい想いよりも大人の言うことは絶対という教訓もクソもない社会の鉄則みたいなものを刷り込んでいるような現場でした。
今は体罰や恐怖統制に厳しい時代になりましたので、どう変わってきたのかを知りませんが、基本的に野球界隈って古き体育会系文化の住処で、そういう育てられ方をした学生たちがそのまま大人になって、その当時の雰囲気ややり方をそのまま再現するんです。
特に野球歴が長く、名門と呼ばれるところを出た野球人が高い序列になりがちなのですが、その人たちにとって、野球というのはそうやって鍛えられるものという認識ですから。ほかのやり方や考え方はあんまり入ってこないわけです。その人が周囲より野球がうまければうまいほど。
それ以外にも
もしかしたらそういう空気の会社に勤めているから自覚なくそうなったかもしれません。
それとも、ただ単に思い通りにならないイラつきがあったのかもしれません。
わが子が主軸となる期間は1年から2年程度で、その間ぐらいチームは強くなってほしい!
のに、なかなか勝てない。だから自分の指導で上達させたい!
あるいは昔は強かったのに今のやつらは。。。と過去に強かった代を引きずっているのかもしれません。
それらの想いの空回りだったかもしれません。
様々な思いが交錯する場で、コーチも一人の人間・親であり、一概にすべての攻撃的な態度を悪いものと断ずるのはナンセンスですが、少なくとも当時前向きでアツい思いを感じることのできるコーチはいませんでした。
超絶ガチ指導するものの、子供との温度差ばかりが広がり、感極まって一人で泣いているコーチ。
弱い奴らはやる意味ないとばかりに怒鳴って場を支配するコーチ。
そんな周りに当てられて同調するほかのコーチ。
いろいろな人がいましたが、当時はなんでこんなにキレてばっかりいるのかさっぱり理解できませんでした。
今では少しはわかる部分もあるんじゃないかと思います。
ですが、子供心には結果的にはその時代の「甘え」観や「育成」論というのを生で学ぶ機会でした。
そして、それらの親たちは今、50~60歳程度でまだ現役で社会で働いてる世代の人たちです。
そこのお前は今では普通にサラリーマンですが、当時の絶対的に逆らえない怖い大人たちは、なんと、今では会社で肩を並べていてもおかしくない関係に変わりました。
当時、大人たちの暴力的・攻撃的なアウトプットにより少なからずそこのお前の主体性や純粋な向上心の育成は損なわれたと思います。
でも、それって、少年野球だけじゃなくて企業でもそういうのあるよねって思います。
何この上司??とか何この先輩?とか疑問を感じることって山ほどあると思うんです。
本当にいくつになってもありますよね・・・
だから、ものすごい早い段階での社会体験だったんじゃないかって思っています。
ちょっと早すぎて、そこのお前は臆病さと遠慮しすぎる癖を強化する結果になってしまいましたが、良くも悪くも人生における決して消えない痕跡になっています。
同世代の集団に溶け込むスキルをつけるという父親の当初の狙いよりもそっちを先に経験したという・・・
結びに入ります。
少年野球とブラック企業、唯一違うのは、少年野球には人生が掛かっていないことだと思います。
ダメでも親がいるし、その後の中・高でいくらでも取り返しが効きます。
一回入ってしまった企業のその後とは全く重みが違うといえます。
それでも、“ちびっ子”そこのお前にとっては強烈な原体験であり、父親の狙いをはるかに超えて多くのことを学習させられました。
そして、大学・社会人と年経るにつれて、その意味をより実感し、人生において10年を超える長~~~~い伏線回収になりました。
人生の出来事は変えられなくても、その出来事の持つ意味はいくらでも変えられる。
今後も、この体験がもっと生きてくれるといいなと願っています。
じゃね~