【詳細版】外資系企業での海外赴任を通して気が付いたこと~欧州仕事編~
さて、第2弾は仕事と個人のパフォーマンスについてです。
日本支社からは働き方改革の流れを受けて、ヨーロッパの労働の文化を積極的に吸収してきてくれと言われた手前、いろいろ観察をしてみたことを書いていきます。
仕事の取り組み方
まず仕事そもそもですが、基本的にこの仕事は必要なのかどうかを気にしますし、やりたくない場合はやりたくない旨またはやる意味がないことを主張します。
日本みたいに上が行ったら文句を言ってはいけない雰囲気はあまりありません。
(が、割と高圧的なコミュニケーションをとる国もあるので、受け取り方は気を付けて下さい。特にフランス・イタリアあたりが有名。)
多くの場合ではそういうことを言わずに我慢するほうが不思議がられます。
なので、言いたいことは役員レベルの方に対しても言うようになりました。
それも尊重してくれて、もっといい方法がある時は教えてくれますし、こちらの言い分が通る場合もあります。
仕事の振り方、労働時間
仕事の振り方も本当に定時で終わるような内容しか振られませんでした。
基本的に全社員定時になると帰るものであると読み込んでいるのか、振りすぎると、仕事が回らなくなる恐れがあるので人手が足りないといって断ったりしているようです。
上の人たちもそれで納得します。確かに人手が足りないな!って。何とかやらせるのがお前の仕事だろみたいな押し込みはありません。
ちょっと怠惰に見える時もありますが、結局やらなかったらやらなかっただけそれなりの評価ですし、やったら評価されます。要は上司に仕事を振らせないとダメなのです。
ここは日本のキャパを超えてもとりあえず振っていくというスタイルとは決定的に違うところでした。
(※仕事によっては長時間働いている仕事もありますし、欧州の中でも長時間労働の文化がある国は存在します。)
これによって、生活はとても楽なものになりました。
結果的に睡眠時間はきちんと確保できるようになり、食事も自炊しながらバランスのいい食事ができるようになりました。
結果、もちろん作業的な側面ではもっと時間に任せてやった方がアウトプットは出るのですが、思考力が必要な仕事だった中で、無理してうんうんうなるよりもがっつり寝て、7時間半に集中するというサイクルを作った結果、思考が圧倒的に深まり、アイデアや考えの質は高まりました。
同時に日本時代みたいな残業代文化もないため、いろいろと働くことに対する概念も変わりました。
これはすごく勉強になりました。
仕事は時間に任せて作業をこなしていく時期も必要なのですが、キレよく深く考えることも同時に必要じゃないですか。
こういう時にあえて時間を絞って脳の働きの活性化に注力させる調整がやりやすいです。
さらに、時間をたっぷり使えば使うほどお金をもらえるわけでもないので、自分の頭脳が100%、120%になれる状態を7時間半に集約するという考え方が主流です。
A, 100%×7.5時間=7.5
B, 80%×10時間=8
これでも彼らはAの方を良しとします。つまり短い時間で成果を出すことに集中しています。
日本だと、長い時間を使えば良しとされるところはいまだにありますし、トータルで8取ってるからAより上回っているという理論です。
仕事はここまで単純な話ではないですが、シンプルに比較するとこれぐらい考え方に差があります。
職場の人間関係について
最後に、欧州では上下関係が本当に厳しくないです。
仕事の上では誰が誰の上司・部下であるかは決まっており、欧米人もそのヒエラルキーは合理的な範囲において守ります。
ですが、仕事の関係ない話や時間では上司だろうが部下だろうが、基本的には年齢関係なく全員フラットな付き合い方をするようにできていました。
これは日本にある外資系企業よりもさらにフランクです。
要は仕事上の関係性はあるけど、一人の人間としては別の話といった感じでしょうか。
また、仲良くなる人達もいますが、プライベートでも一緒に遊ぶというケースはまれです。
本当に仕事は仕事と割り切っています。
そのため、上下関係に警戒したり、気を使いすぎて遠慮していると不思議がられますし、事実、あいつは年上なのにとか年下なのにとかいう愚痴や文句は一切出てきません。
また、基本的に社会に出てからは自分で責任を取る一人の大人と扱い、他人に干渉することを良しとしません。
相手の性格や考え方に不用意に文句をつけようものなら人権侵害なんて受け取られたりします。
そのため、明確に問題がない限りは人のやり方や考え方、人格は否定しません。
問題があっても、問題がある部分だけを指摘し、改善の要求はされますが、そのものの否定は入りませんし、無駄な説教もありません。
淡々と、これは問題であって不利益を被っているからやめろ。と言われるだけです。
外資系企業のような多様な文化が入り混じる環境では、心構えがどうだとか礼儀がどうだとかそんな話は一切されません。
仕事のクオリティ
また仕事のクオリティですが、いい意味でも悪い意味でも雑です。
細かいところ、切れ端は積極的に捨てていき、面倒なことはやりたくないし、やらなくていいならやらないスタイルです。
特に、細かいところで、言われれば気になるし、あったほうが気持ちがいいような作業や仕事もありますが、欧州ではみんなちょっと取りこぼしあるなと思っても、もう取りこぼしちゃいます。
だいたい取り切ったからいいでしょ?って感じでみんな納得しています。
そこのお前は、日本国内では仕事が粗くて大雑把といわれることも多かったですが、そのまま同じ働き方をするとヨーロッパでは半分引かれ気味にすごく細かいといわれます。
というのも欧米の人は働く上で、細かいことは好きではなく、なるべく楽にいきたいと思っています。
神は細部に宿るなんて絶対理解されないですし、100%を目指して頑張らなければならないという思考を持つ人は少ないです。
彼らは、超えたら評価してもらえるだろうというラインのギリギリを攻めます。
学校のテストで例えるなら100点を狙う人は誰もおらず、合格点を超えるようにしか取り組まないのです。
だから彼らは最終成果がどうだったかについてはその与えられた課題をクリアできたかどうかだけを気にしますし、それに必要ないものはやらないでOKって思っています。
だから、無駄に頑張ってるアピをする人もいません。
同時に、ここぞという時にはごりっと押し込むための押しの強さや議論に勝つ方法はきちんと心得ています。
空気を読んで言わなかったとか言いたかったけど言えなかったということはありません。ここぞという時にはきっちり主張を繰り広げます。
そのため、激しい衝突も絶えませんが、それでもさっぱりしたもので、仕事の上では衝突するけど個人としては尊重しあうという感じで面と向かっているときはきちんとお互いをリスペクトしていました。
ただ、少し物足りない点を挙げるとすると、伝統的な日本人のように仕事に対するアツい想いを持つ人はほとんどいない気がします。
縁あって一緒になったのでもう少し知りたいなと思ったりするものですが、きわめてドライでした。
やりがいとか使命めいたものを感じている人はほとんどいません。
もちろん研究職だったり、その他特殊な仕事にアツい想いを持つ人はいますが、普通のサラリーマン、雇われ労働者でそういった仕事や会社に対してアツい想いを持った人はいません。
転職も多いですし、あくまで契約に則って仕事をするというスタンスですね。
そういう意味では、周りの人々と気持ちを分かち合うことを良しとする日本の文化は好きなので、日本の方がいいなと思ったりもしました。
最後に、各国それぞれの好みや文化が存在しますので欧州のやり方をそのまま持ってくるのは難しいです。
とりわけ、ベテランの上司連中にこの話をぶち上げると揃って嫌な顔をされるので、そこが一番のハードルかと思います。
上司陣も欧州の文化を当然知ってはいるのですが、そうすると自分の威厳を失いますし、今更欧米流のコミュニケーションスタイルなんて身につけられないので、怖くて踏み出せないんじゃないかと。
そんなわけで日本には日本の文化があるとは思いますが、いいなと思うところは積極的に持ち帰って、自分が上に立つ側になって変えれるだけ変えまくってみようとも思います。
少なくとも日本が変だよって思われるところが、この赴任で分かった気がします。
外から見るとこうも見え方が変わるんだなぁと改めて実感しました。
次はこれ!
ほいでは