そこのお前の外資系勤務と与太話ブログ

凡人が行く外資系企業勤務やキャリアの与太話や裏話。緩いのと辛いのまぜまぜ。人見知りやビビりだって人生案外イケるじゃんって思ってもらうための与太話。毎週月曜・水曜・土曜日更新予定

【キャリア】スーパースターを管理職にしなくてもよかった話【昇進】

興味深い話があります。

 

自分が昔ついていた上司の話ですが、従来の日本型価値観ではあまり考えにくい事例だったので書いてみようと思います。

 

非常に信頼のおける、部下として安心できるヨーロッパの上司の話。

 

上司になる・昇進する

これを達成するには部下として、

良い仕事を掴み、

良い人脈を築き、

良い成果を挙げ、

良い評価を得る。

 

これを積み重ねることでようやくたどり着くものだと思っていました。

 

他の人より努力を重ね、

他の人とは違う事をし、

他の人より多くの影響を与え、

他の人を凌ぐ実力と評価を得る。

 

これが唯一にして、最短の道だと信じていました。

だからこそ高い給料を得ながら、次元の高い職位に在職するものだと。

 

でも、それはそういうハードワークをしてきた人の驕りとプライドがそういう論調を作っているだけかもしれません。

 

中間管理職が部下よりも偉い・凄いという時代を抜け出し、管理職には管理職としてのエキスパートキャリアがあってもいいと思います。

 

やはり世の中には本当に多様なキャリアと生き方があるものです。

 

そこのお前の元上司は入社してから3年経過後に管理職、7年目にして2部署目のポジションを歴任中の管理職でした。

20代後半での管理職昇進です。

 

その2部署目でそこのお前と一緒になったのですが、正直びっくりしました。

 

自分と年齢が数歳しか変わらないのにすでに管理職歴が3年目なのです。

かたやそこのお前はちゃんとした管理職経験は皆無です。

 

この昇進の速さにクラクラ来ましたし、どんなにすごいんだろう?と思っていました。

 

さすがヨーロッパ本社のスター軍団だな。なんて。。。

 

ですが、そういう類のものではなかったのです。

 

その上司は入社して以来、「良い」評価を取ったことは一度も無いというのです。

つまり、会社からスーパースターとして扱われていた人ではないようです。

 

話を簡単にするために通信簿式で例えると、5段階の中で3しか取った事がないというのです。

 

かといって悪い評価(1や2に該当)を取った事もないのですが、それでも管理職になる手段が存在しているということになります。

そして、その上司はそこのお前の在籍期間中に初めて5段階中4を取ったそうです。

 

キャリア初の4。

管理職としての4なので非管理職よりも難易度の高い評価ランクといえます。

 

そんな元上司がどのようにして管理職になったかというと、会社の空き管理職ポジションに片っ端から応募したそうです。

(※結構泥臭いですね。)

 

とはいっても全く関係ない仕事はできないので、ある程度自分の経験に関連するエリアを探し出し、自分を売り込んでいたそうです。

 

こんな売込みが自分でできる環境自体が日本では非常に珍しい訳ですが、売り込んだところで簡単に通るわけでもありません。

 

それでも元上司は運よく見つけ出しました。

 

同期入社で元上司より常に成績の良かった同僚はいまだに平社員としてよい成績を取っているものの、管理職になっていません。

 

元上司の判断基準はこうでした。

管理職になった方が待遇もいいし、自分の適性に合っている。

だから、細かい仕事への親和性や自分への適合性よりも、管理職の経験を積むことが最初にやるべきだと判断した。

これが最大の理由だったそうです。

 

元上司は別に部長クラス・役員クラスへの出世を狙っているタイプの人間ではありません。

 

ただ単に、課長級に仕事が自分に合っているだろうと判断しただけだったのです。

 

その一方で、同期入社の同僚は仕事を選びすぎてキャリアが停滞気味になっているそうです。

 

要はピンポイントに自分の所属するチームでの昇進を狙っているようですが、そうなると現管理職の玉突きを待たねばならず、確率が一気に下がります。

 

逆に多少関係しなくても管理職を積極的に狙いに行った方がいいと判断したようでした。

 

管理職適性

 

そう説明を受けながら、よくよく振り返ってみると、元上司、部下としての実力はさておき、大局観・対人折衝術・クリティカルポイントを見抜く技術が抜群に高い人でした。

 

事実、そこのお前含め、部下からの信頼が厚い上司でした。

仕事の要不要の判断が非常にうまく、無駄なことをさせないことに非常に優れた上司でした。

人種も言語も違う中で、完璧とまではいかなくても、今までついた上司の中で誰よりも安心できていたと思います。

 

自分を鍛えてくれるかどうかという目線で見ると目覚ましい鍛錬にはなりませんでした。

 

おそらく、同僚として勝負した場合には仕事のクオリティや思考力、緻密さやスピードではそこまで大差ないと思います。

(※何なら多くの部分では勝っているかもしれない。)

 

が、余計なことを心配せずに仕事ができる迷いのない状態を作り出してくれることで自然とパフォーマンスは発揮されるような仕組みだったと思います。

 

このことに気が付いた時に大きく考え方が変わりました。

 

鍛錬というよりは今まで気が付かなかった部分を気が付かせてくれました。

 

部下レベルでの仕事だとそれを発揮できるエリアが限られたりするので、そもそも元上司は「管理」の役割に適性があった人材と言えます。

 

その結果、管理職としての方がキャリアにおける全体的な評価は高いという現象が起きるわけです。

 

こういうケースって日本企業の認識の中に入っていない点なんじゃないかと思っています。

 

管理職にした方が輝く人材と管理職にしても変わらないか、むしろ悪くなる人材という差は確実に存在します。

 

理想は部下としても上司としても最高ランクであることですが、それは黙って一番インパクトのあるエリアを任せればいいのです。

 

問題は、部下としてよければ管理職でもよくなるだろうという大筋の予測が多数派であることです。

 

多くの場合で管理職の方が比較的給与が高く、裁量・責任も大きいです。

 

この点、部下として最高の人材がその職位を得る方が成果主義の観点では合理的です。

より成果を出した人にお金と権限を得るチャンスを付与しているわけですから。

 

ですが、もう少し「管理職」へのクラスチェンジのあり方を見直してもいいのかもしれません。

 

管理職として求められる能力は部下として求められる能力の延長線上にはないものがあります。

 

新しく一から鍛えなければならない能力が存在します。

 

特に

人の能力と感情を理解する能力

より広い視野で物事をとらえる能力

などは部下時代には必要とされない場合も多いです。

 

この異なるスキルセットは部下としての能力や評価を必要条件とはしていません。

 

元々得意な人もいれば苦手な人もいますし、鍛え方次第で伸ばすことができるとされています。

 

そこのお前の元上司もその適性を存分に生かしてキャリアの発展を図っているわけです。

 

これはすごく魅力的で人材が有効活用できていると感じます。

 

日本ではあまり同様の事例を聞いたことがありませんし、年功序列で昇進させる企業なんかはあまり若いころから管理職としてのトレーニングを施しませんし、その必要性からは無縁の環境に社員を置きます。

 

そうするとせっかく入社時点で持っていた宝も腐ってしまう場合があるということです。

組織目線では取るに足らないかもしれませんが、個人目線で言ったら大きな損失です。

 

それを巧みに回避し、自らの成果と報酬を最大化できている元上司は素直に尊敬に値します。

 

日本的文化でこれを導入するのはまだまだ難しいと思います。

 

年齢に紐づくヒエラルキーが徐々に緩和されてきているとはいえ、まだまだ欧米とは大きな差があります。

 

こういうダイナミックな動きは海外の人事方針ならではですが、個人にとっては非常に意味のあるキャリアを構築できますし、ひいては組織全体に資する結果をもたらすことができます。

 

中間管理職が優秀な人材の名誉職だったり、さらなる上のステップへの一時的な腰掛椅子とするにはあまりに会社全体のカギを握っている度合いが高すぎるのではないかと。。。

 

逆に年功序列昇給を生かすならば、こういった組織モデルにした方がプレイヤーが輝き、中間管理職適性のある人が管理職になる組織づくりを進めやすいかもしれませんね。

 

年齢にかかわらず上がっていく給与を前提に、中間管理職も含めて上も下もなく適性に応じて振り分ければいいわけですから。