【管理職】管理職はなるべく多くの人間の立場が分かる人間の方が得をする話【キャリア】
成果を上げたければ仕事に尽くせばよい。
良い評価が欲しければ上司に尽くせばよい。
これは労働者の残酷な現実であり、感覚だと思います。
上司の要求と成果の2点が正確に合致するならば、理想的です。
成果主義マネジメントの観点からも部下の成果への情熱を作り出す意味でも。
だが、これが乖離している場合、恐ろしいことになります。
求められる成果が単純に定量化しにくかったり、同じ数字でも比較しにくい仕事の場合なんかは特にそうなりやすい。
残酷な話を重ねますが、個人評価から主観や定量化可能な成果とのズレを完全に排除することは多くの場合で不可能です。
だから、いつの時代も評価を得るために上司に媚を売り、要領よく高評価と出世のための準備の手はずを整える部下は存在します。
本当に会社や世界のために役に立っているかどうかは不明でも、この要領の良さに少なからず比重が寄ります。
これを完全に排除するにはAIが評価をしない限り、無理でしょう。
今は人事考課もAIが代行すると予言されるような世の中になってきています。
ですが、それすらもSEO対策と同じようにAIの評価が高くなりやすい仕事の仕方というものを見つけ出す人が現れ、不平等感や不公平感を生み出す評価、場合によっては会社に資さない評価が下される可能性が十分にあるでしょう。
SEO対策に関しては、現にGoogleですら、記事の内容の真偽・価値の有無の判断を純粋な内容に基づいて評価できているわけではありません。
ましてや会社の仕事の通年評価です。
目に見えない、文字に残らない仕事も多ければ、仕事による影響を評価するにあたっても基準を定めるのは容易ではありません。
だから、評価者の能力というニーズはまだまだ存在するのです。
その一方で中間管理職の職位でいえば、そこのお前のまだ浅い経験のみではありますが、
いい評価が欲しければ部下と上司に尽くさねばならない。
結果が欲しければ部下に尽くさねばならない。
このように変わります。
部下は仕事のように無機質でわかりやすいものではないです。
感情を持ち、可能性を持つ人たちなんです。
あまりに多い可変要素があるのですが、それを引き出すための手腕が管理職に問われます。
成長=鍛える・成長=引き出す・鍛える≠引き出す
これは個人を鍛えることと個人を引き出す事が決定的に違うと認識した出来事でした。
強烈なストイックさを武器として努力するスタイルだった自分がそれを改めた経験があります。
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ディベートの全国・国際大会に勝つチーム作りをしていた時の出来事。
異なるチームマネジメント+育成スタイルをもつそこのお前と友人の話です。
高校野球出身のそこのお前にとっては、ゴリゴリにハードに鍛えることが染み付いた定石であり、正攻法でした。
事実、そこのお前は個人の能力を鍛えることが非常に得意でした。
練習と訓練を繰り返し、個人の限界を突破させ、実力を向上させるという意味では地道ながらも一際強い成果を出すことができていました。
「育成」という意味では非常に良い効果がありましたが、個人の特徴を活かした育成というよりは徹底した基礎反復と量に基づく「特訓」スタイルでした。
結局、成果が出ていたことを理由に批判は封じることができたわけですが、ストイックさが求められるため、誰でもできるものではなく、耐性・適性のある人を選ぶ方法でした。
ですが、友人の彼はそこのお前とは対照的なスタイルでした。
彼はひたすらに理解を示し、周囲の発言に思い込みや予想をかけることなく非常に素直に人の話を聞くことができる人間でした。
そんな彼は人の能力を引き出す実力に長けていたのです。
彼は人が自覚していない、良いところを自覚させ、発揮させることが非常に得意でした。
彼の周りには自然と人が集まり、助言を求め、自律的に行動できる人が増えました。
その結果、それぞれが自分自身の能力を自覚し、成長を促す環境を構築していました。
限られた自分自身のリソースとチーム人員の中で成果を最大化するという意味では非常に効果的なやり方だったと思います。
個人を鍛え、最大化するというそこのお前式のやり方は一人に懸ける時間を多く確保することができれば効果を発揮しますが、限定的です。
トレーナーの体は一つであり、同時育成可能な人数に限りがあります。
また、トレーナーがいないところでは鍛えることができません。
逆に個人のいいところを引き出すモデルは少し違います。
自律性と自発性を発揮させ、個人が自立的に多様性のある進化をすることができるのです。
一つの戦い方だけではなく、個人に応じた貢献方法で成果を出す事ができるようになります。
これがチームにおける適材適所を実現する上で非常に重要な役割を果たしました。
それぞれの長所だけでなく、短所も含めて受容し、長所が生きる仕事の割り当て方を実現しました。
チーム各員が各々の役割を自覚し、自ら強化するサイクルを生み出し、チーム発足時からの大幅なステップアップを達成させました。
そこのお前もいつしか乗せられていたわけですが、育成分野での強みを生かすパフォーマンスを出せました。
これらのスタイルは片っぽのみではだめで、両方長所と短所をそれぞれ持っています。
個性に関わらず普遍的に必要な技術を向上させる
個人の限界バイアス(自分で自分に蓋をすること)を取り去り、突き抜けさせる
この2点のためには人に限界を突破させてもらう方が簡単だったりします。
その意味ではそこのお前の育成スタイルは非常に強い効果をもたらすといえます。
ですが、限界があります。
逆に
集団の中で個人がより快適に貢献する方策を発見する
リーダーやトレーナーに依存しない自律性を身に着ける
よりインタラクティブで継続的で永続性のある成長を促す
この3点のためには彼の実行するモデルが非常に高い効果を発揮します。
双方のスタイルに合う・合わないはありますが、メンバーが安心感と前向きな貢献欲求を生み出すには彼のモデルの方が圧倒的に優れています。
事実、今までは実力不足という認識を持たれていたメンバーも徐々に実力を発揮するようになり、集団全員での成果は最大化されました。
組織内の少数のとびぬけた成果をそのまま全体の成果とせず、それ以外のメンバーの貢献による成果も加えて全体の成果を最大化する全く無駄のない組織運営でした。
限られた時間と限られた人員の中で効率と成果を最大化する。
様々な年齢・経歴の人が集う会社では大学での集団以上に多様で様々な個性が溢れます。
これを効果的にマネジメントしていくためには個性を理解し、それぞれの立場や考えを理解することが重要であることを示唆してくれました。
そこのお前にとってはマネジメントの奥深さを体感するきっかけになりました。
基礎を徹底し、鍛えることも非常に重要な能力開発の一要素ではありますが、元々持っている素質に目を向け、それが最も生きるように個人にカスタマイズを促るという事ができるという事を知ることができた瞬間でした。
器の大きい人間になるというのはそういうことだと理解しました。
そんな話です