ヨーロッパは全員のびのび暮らしていて、幸福で先進的という幻想
欧米は日本より優れているという思い込み
正直、そこのお前もそういう幻想を抱いていた。
どうしてだろうか。
バブル崩壊後に生まれた世代で日本のネガティブトレンドまっただ中で育ったからだろうか。
新聞を見てもニュースを見ても日本はヤバいとか海外はどんどん成長しているとかそういうニュースばかりを聞かされてきたからだろうか。
まぁ実際住んでみて、日本に比べてよいなと思う場面はたくさんある。
特に、労働負荷のかかり方が明らかに低いことは概ね間違いない。
ただ、生きやすいかという意味では必ずしもYesばかりではない。
そもそもヨーロッパで一括りにしすぎていて、いいトコどりでマルっとヨーロッパは素晴らしいと思い込んでる可能性すらある。
成長している国もあれば、苦しんでいる国もある。
賃金が日本より抜群に高い国もあれば、賃金が日本より低い国もある。
日本人レベルに働くのが普通な地域や業種もあれば、定時きっかりで帰るのが普通という事もある。
スイスのように滅茶苦茶物価が高い国もあれば、日本よりも安い国もある。
北欧のように福祉がとても充実していて国民の幸福だが高い国もあれば、ギリシャのように国からどんどん人が逃げ出している国もある。
スペインのように一部の主要都市の独立問題で揺れるところもあれば、イギリスのようにEU自体から距離を置こうとしている国もある。
中にはそもそもの身の安全すら危ういとされる国もあり、全く以って同じではない。
たしかに、移動の自由が広範囲に認められているし、統一通貨が使える国も多い。
それ故、似ている部分や混ざり合っている部分は多いが、それでも近くに行けば似て非なるものである。
ヨーロッパの人がアジアで中国・日本・韓国を概ね一括りにすることもあるように、日本人もヨーロッパを一括りにしがちである。
なんなら、欧米という言葉はヨーロッパだけでなく、アメリカまでセットになっている。
そんな形で都合のいい論調を引っ張るように目立つ部分をいいとこどりしてヨーロッパとはなんたるかをドヤ顔で語る浅い議論はいくつも聞いてきた。
ある時は北欧を参照し、ある時はイギリスやドイツを引き合いに出す。
イタリアやスペインが出てくることもあるし、オランダやフランスと比べることもある。
だが、それぞれの国がそれぞれの悩みを抱えていることもまた事実である。
実際、ヨーロッパ諸国同士で仲が悪い国も当然あるし、逆に相互に羨ましがっている場合もある。
ヨーロッパも一枚岩ではないし、ヨーロッパ間での人材の偏りが起きたり、国家間のトラブルを抱えていることはあまり日本では認識されていない。
多くの日本人はヨーロッパ諸国のことをちゃんと知らない。
まるでおとぎ話の国のように、どこか遠くに感じている人もいる。
欧米は~とは言うが、多くのヨーロッパ諸国よりも日本の経済規模は未だに大きいし、教育水準も比較的高い位置に属している。
もちろん、逆転され、追い抜かされた国もあるし、国際的存在感で劣っているように見えることも多々ある。
だが、経済規模・教育水準・社会福祉様々な指標で、ほとんどすべてにおいて日本に勝っている国があるだろうか。
くまなく見たわけではないが、圧勝しているのはアメリカぐらいではなかろうか。(これからは中国も?)
ヨーロッパ諸国をEUとして束にして見ると規模では勝てなくなってしまうが、それでも国単体で見れば決してあえて劣等感を持たなければならない自分たちではない。
無条件に欧米を見習うべきというバイアス
それでも、「欧米ではこうで~」とか「日本に比べて欧米は進んでいる~」なんて安易に論ぜられることがある。
特に働き方の文脈や文化的豊かさ、社会的なトレンドでは特に欧米から流入してくる概念やコンセプトは多い。
人権だってそうだし、働き方改革だってその通りだ。
様々なものが日本に来ている。
それはそれでいい。
だが、なぜ日本が遅れていて、劣っているという判断がそこになされるのだろうか。
細かい指標を個別に見ていけばこれはこの国がいい、あれはあの国がいいと上には上がいるに決まっている。
困ったことに、そのいいトコ取りをするにしても、裏でかかっているコストや犠牲にしているモノに焦点を当てたものは多くはない。
そこに違和感を感じずにはいられない。
いいトコ取りの違和感
表で目立つところにはいつも裏側の悪いところがある。
というか知らず知らずの間に日本が恵まれている。
日本のようにそこもかしこもお店が24時間営業している環境などない。
(※ドイツの一部地域や空港などの常に人が出入りするターミナル等は例外だが。)
道端に自販機などほぼないし、スーパーの陳列もめちゃくちゃ荒っぽい。
非常に柔軟な休暇制度はあるが、日本のような3連休はほとんどないし、年末や三が日、ゴールデンウィークやお盆はない。
(※年にほんの数日銀行の休みと国民の休日があるが、日本のようにほぼ毎月祝日があるわけではない。)
労働時間が短いといったって、大きな工場などは日夜、土日休まず操業するのは普通にある。
平均賃金が高い国は総じて物価(人件費)が高いか税金が高い。(あるいは両方)
これでは庶民の暮らしが必ずしも日本よりも圧倒的にゆとりがあるとも限らない。
移動の自由はあるが、移民や物価の安い陸続きの国を使い倒して、もともと住んでいる人の利益を守るため、結果的に格差が拡大する動きもある。
日本に比べて金額に対して決して質が高いとは言い切れないものも溢れているし、至る所でお金を取るようにして少ない労働時間でも儲かるようにしている。
駅のトイレでもお金を払わなければならないし、スーパーのレジ袋は日本よりずっと高いこともある。
他に選択肢がないから払ってしまう。。。といった分野にはこれでもかというほど細かくお金を取る。
これぐらい無料でやってよ!なんてクレームはどこ吹く風で、もしサービスを受けたかったらお金を払え!どうせ他に選択肢がないんだから!ぐらいの勢いで来る。
逆に金にならない気づかいやサービスはばっさり切り捨てる。
賃金が比較的低い国の人が高い国に出稼ぎに出て、孤独や窮屈感と闘いながら生活を構築する場合もある。
国内で使う言語が違う国だってある。
まぁ住んでみてわかったことだが、いい面と悪い面がある。
どうもヨーロッパの事例を無条件に先進的で優れたものとするには少し短絡的すぎると思う。
彼らは彼らなりに生きづらさや苦しみを抱えていて、日本がいいと思っていても、彼らがそう思っていないこともある。
逆に、日本では議論が再燃しているサマータイムも欧米では廃止が検討されていたりする。
ここまで考えてみると、もうちょっ日本人は日本でどういう経緯で社会が流れてきたかをもう少し知ると同時に、欧米の影の部分を理解する必要がある。
日本には日本なりの戦い方があると思うし、ヨーロッパのやり方をそのまま持ってくることは文化的にも成立しにくいし、同様の効果が期待できるとは限らない。
逆にヨーロッパの人は日本はすごいんでしょ??なんて聞いてくる。
当然、彼らも日本のことをよく知らないからだ。
そして、いつも返す。
「住むにはいいところだが、働くな」
って。
どこの国の人も隣の芝は青い。
やっぱり、いいトコどりが簡単にできるほど世界は簡単ではないようだ。
ヨーロッパの人もここではないどこかに理想を重ね合わせている人もいる。
今までのように勝手に日本を卑下し、海外に幻想を抱くのはやめるべきだと思った。
いいところも悪いところも多角的に日本国外という存在を捉えようと思った。
ただ、日本にいる若い世代が日本に希望を持っていないという事態は憂慮すべきことだと思います。